「あみ!どぉしたの~?」

ひょこっと私の前に姿を現した紗江子。…隣にいる女子は、新しくできた友達なのだろうか。

「いや、男子ばっかりでさ。居づらくなっちゃって…、さえこは?」
「へ?あぁ、この子~。昨日友達になったんだけど、私たちより早く学校来てたみたいで!ほらっ、仲良くなろ~っ」

そう言って、友達を私の正面に向かい合わさせた。ひどく人見知りなようだ。目も合わせようとしない。

「…私、亜美。よろしく…ね?」
「………」
「…名前は?」
「……あ…」
「どうしたの?」
「…えっ…と………」

…なかなか名前を言い出さない。きっと紗江子から声かけたんだろうな。

「あみ!私が紹介するねっ、…ゆうちゃんだよっ!」


――――――?

胸に引っかかりを感じた。それはきっと…サイレンだったんだ……。


「ゆう、ちゃん?」
「…あ、…はい……」

空気をほんの少し震わせた彼女の声は、とても…小さな、小さな…それでいて、―――とても、透き通った声だった…。

「さえこから話かけたんだ?」

くすっと笑みをこぼす私に、紗江子も安堵したようで。

「うん、そうなんだ~!新学期の時、ゆうちゃん1人だったから!これはチャンスだぁ~!!って思ってねっ♪」
「はは、さえこらしーよ」

笑いあう私たちをよそに、ゆうちゃんは窓を眺めていた。

「ゆうちゃんっ!教室戻ろっかぁ~」

さえこはゆうちゃんの腕を引っ張る。一瞬、ゆうちゃんの体が、ビクッ、と、反応したような気がした。

「あみ!ばいばぁい♪また帰りねぇっ」
「あ、うん!またね!ゆうちゃんも!」

…ゆうちゃんは、振り向かなかった。感じ悪いな、とも思ったけど…だけど、何か引っかかるものが気になっていた。何なんだろう……。