あたしはそうではないが、北条昴という男は騒がれる人である。


幸か不幸かは本人に聞かねば分からぬが、外見、内面、共にモテる要素がいっぱいなのだ。


それに、質問してきたのが馬場さんである。


彼女もそんな彼に惹かれた一人の少女である。


嘘は付かないと約束したものの、何度か話を聞いたあたしがありのままに話すと深く傷付けてしまうだろう。


さて、どうするか…


あたしの頭の中は、玩具の散らばる子供部屋の如く、足の踏み場もないような状況であった。


「…あの、質問変えます。」


答えないあたしを見かねてか、馬場さんはこんな提案を出した。


「もし、北条先生が滝沢先生のこと好きで、告白されたら…どうしますか?」


馬場さんは、何とも言えぬ表情でこちらをじっと見つめている。


先程よりかは答えやすい気がしたが、それでもあたしは暫く何も言えなかった。