しかし少女――由が馴染に向ける感情は友人に向ける感情では無く恋情であった事が幼馴染と云う枷からの唯一の違点。
一方で、侑吏は無駄に賢いその頭脳を生かす訳でもなく、家から一番近いとの理由のみで区内の高校へと昨年入学。同じくして由も彼と其処へ昨年から通ってる。
そして今日も今日とて当然の如く、共に隣歩く。
この時、由にとってこの日常が変わるだなんて夢にも思わなかった――。
「おっはよー!ゆーいっ」
正門に辿り着いた頃、後方から手を振って自分の名を呼ぶ親友の姿。
「欒ちゃん!おはよう」
速水 欒[ハヤミ マドカ]
短く切り揃えられたショートヘアと、ブレザーに代わりパーカーを愛用する姿は元気印の彼女そのものを現している。
「ったく朝から見せ付けないでよね。まだ5月だっていうのに、あー暑い熱い」
態とらしく手で扇いでみせる欒は、ちらりと妖しい瞳を覗かせ此方の様子を伺い見る。
「ちょ、欒ちゃんてば!私と侑吏はそんなんじゃないんだってば」
「へぇ〜?とか言って顔が赤いぞ?ゆ・い」
両の口角を上げ、正にしてやったりな表情を浮かべては頬を突かれる。