ドアが閉まる音と同時に慌てて立ち上がる。

けど、忘れてた。

ゴン!

「~~~~ったぁ~い!」

机にぶつけてしまった頭を両手で押さえながら、その場にうずくまる。


なんで?

なんで、こんなことになってるの?

今日は課長と空港であのときみたいにロマンチックなキスとハグをしてるはずじゃなかったの?


それなのに……


バンカメに移籍って何?

佐久間主任が課長の後任の補佐って、何?


「聞いてない!全然、聞いてないよ、そんなこと!!」

うずくまりながら、頭が痛いことも手伝っていろんな想いがごちゃごちゃになって涙が出そうになる。


でも、次第に頭が冷静モードになる。


いや!

泣くもンか!

あんな薄情男のことでなんか!


バンカメでも、ヨドカメでも、キタムラカメラでもどこへでも行っちゃえ!



私は……



私は課長の恋人とかゆーやつじゃなかったの?


何でも話せる間柄じゃないって言うの?


しかも、何で今、こんなところに放置されてるの?


今度課長に会ったら、ハリピンチョップにメガトンキック、かましちゃる。


頭のてっぺんをさすりながら、部屋を出ようとした時、外側からドアノブが回り、ドアが勢い良く開く。


「課長!」


少し見上げた私の目の前には息咳き切った課長の顔が……。


「どうし……ふがっ!」


言葉が課長の抱き締める腕の中で、フンガモンガになる。


「さっきはすまなかった」

「課長……」

「今度、改めて説明する」


課長のスーツから微かに香るオーデコロンの香りにクラクラめまいがする。

気絶しそうになる課長の腕の中で、「好きだ……由紀」と囁く課長の声を聞いたような気がした。