これは夢?
さっきのモーソーの続き?

でもこの手の力強さは……

夢じゃない感じがする。

じっと課長の手を見つめる。


ううん。

これは、夢だよ。

バカだね、私。

会いたい会いたいとか思っているうちに、こんなモーソー課長まで作ってしまうなんて。


課長とは今日の夕方、空港で会うはずなんだもん。

それで、課長はとんぼ返りで、また飛行機に乗って帰る予定なんだもん。


その課長が会社に来てるはず、ないっしょ。

うんうん頷きながら、モーソーっぽい課長の腕をサラリとほどく。


「杉原?」

いやぁ、まずい。


声まで鮮明に聞えて来た。

しかもバッチリ、低音の美声のステレオ再生。


小康状態に入ったらしい、お腹が再度、噴火の最終警告を告げる。


「うっ!」



私はお腹をさすりモーソー課長の肩をポンポンと叩く。

末期症状だ。

手触りまで鮮明。

だけど、視界がモーローモード。



「すみません、カチョー。今の私には、モーソーに付き合っているゆとりなんかありません」



私はモーソー課長の手を振り解く。


「何が妄想だ!」


それでもしつこく腕を掴む課長の手を振りほどき、トイレ目指して再び猛ダッシュする。


背後に佐久間主任の声を聞きながら。


「奥田課長!お久し振りです」


……えっ!