食事は夢を見ているんじゃないかってくらい美味しい!

特に生まれて初めて食べた白子。

「課長、これ、すっごく美味しいです!!」

「俺のも食べるか?」

「えっ?!いいんですか!?いただきます!ところでこれ何から出来てるんですか?」

課長の白子を奪いながら尋ねる私に、課長は複雑そうな顔をして

「黙秘権を行使する」

な~んて言って、教えてくれない。


ともかく!

こんな風に一緒に食べているのが、無愛想で意地悪な課長じゃなかったら、ランクは★★★★★。


そして、帰り際。


おごってくれた課長に「おごちそうさまでした」と、ふかぶか~とお辞儀をし、満腹のお腹を抱えて運転席に乗り込む。

課長も隣に座り、シートベルトを付ける。

「え……っと、左アクセル、右ブレーキでしったっけ……?」

寛いでいた課長の背が椅子からズルっと落ちる。

「……お前、今、何て言った?」

「あ、逆でした?えへへ」

「『えへへ』じゃない!」


課長の顔がなんかマジ恐い。


「冗談ですよ。冗談」

「冗談って。ところでお前……免許は持ってるんだろうな」

「持ってますよ。当ったり前じゃないですか!」


ちょっとムッとする。

課長の反応から推理すると、右アクセル、左ブレーキ、か……。


右ね、右。


「ちゃんと取りましたよ。……1週間前に」

「おい!待てっ!!どけ!俺が運転する!!」

「いやですよ。課長、お酒飲んでたし、その上、コンタなし運転なんて危険です」

「危険って。お前の運転の方がよっぽど……うわっ!」


アクセルを思いっきり踏み込んだ瞬間、課長の体が後ろに仰け反る。


「ライト点けろ!ライト!ばか!それはワイパーだ!」

「知ってますっっっ!課長が焦らすから間違っただけです!!」

「ウィンカー出せ!ウィンカーを!!」


ウィンカー……

ウィンカーってどれ?

とりあえず……これ、だったかな?


「それはハザードランプだ!!バカヤロー!!」

「もうっ!大丈夫ですから!少しは部下を信じて黙ってて下さい!」


こうして、課長のバカヤローは家に辿り着くまで、50回以上、車内にこだました。