「杉原、どうしてここに?お前、見合いは?」
「課長こそ!飛行機に乗ったんじゃ……」
課長がチェックインカウンターを挟んだ向かい側で、ポカ~ンと口を開く。
「俺は、キャンセルして……」
「私も、キャンセルして……」
「「なんでキャンセルなんか?!」」
2人の声が重なり、「「えっ?!」」と再び声が重なり絶句する。
課長はこめかみを押さえると、溜息を吐く。
「出発を明日に延期することにしたんだよ」
「ええっ?!具合でも悪いんですか?それとも、忘れ物でも?」
身を乗り出す私の方へ課長がツカツカと歩み寄りながら苦笑いする。
「両方だな」
「両方、ですか?」
「ああ。そうだ」
「わっ、私、車借りて来ます!運転して、課長をご自宅まで……それで忘れ物を……」
慌てて走り出す私の着物の襟首を課長がガシッと掴む。
「いい!それだけはやめろ!絶対やめろ!」
「遠慮はいけません!」
キッとにらみ返す私に課長はさらに深い溜息を落とす。
「俺はきっと病気だな」
「だから、今、車を……。え?病気?じゃ、やっぱり私が運転して……」
「いいから、聞け!」
課長の低音の凄味に思わず「はいっ!」と背筋を伸ばす。
「非常に想定外のことだが……」
そこまで言って課長はしばらく目を瞑り、まるで何かを観念したかのように目を開いたかと思うと、晴れやかな瞳で私を見つめて言った。
「どうやら、俺はお前のことが好きらしい」
「課長こそ!飛行機に乗ったんじゃ……」
課長がチェックインカウンターを挟んだ向かい側で、ポカ~ンと口を開く。
「俺は、キャンセルして……」
「私も、キャンセルして……」
「「なんでキャンセルなんか?!」」
2人の声が重なり、「「えっ?!」」と再び声が重なり絶句する。
課長はこめかみを押さえると、溜息を吐く。
「出発を明日に延期することにしたんだよ」
「ええっ?!具合でも悪いんですか?それとも、忘れ物でも?」
身を乗り出す私の方へ課長がツカツカと歩み寄りながら苦笑いする。
「両方だな」
「両方、ですか?」
「ああ。そうだ」
「わっ、私、車借りて来ます!運転して、課長をご自宅まで……それで忘れ物を……」
慌てて走り出す私の着物の襟首を課長がガシッと掴む。
「いい!それだけはやめろ!絶対やめろ!」
「遠慮はいけません!」
キッとにらみ返す私に課長はさらに深い溜息を落とす。
「俺はきっと病気だな」
「だから、今、車を……。え?病気?じゃ、やっぱり私が運転して……」
「いいから、聞け!」
課長の低音の凄味に思わず「はいっ!」と背筋を伸ばす。
「非常に想定外のことだが……」
そこまで言って課長はしばらく目を瞑り、まるで何かを観念したかのように目を開いたかと思うと、晴れやかな瞳で私を見つめて言った。
「どうやら、俺はお前のことが好きらしい」