「うちの車は新車じゃけん」

「うちンとは、まだローンが残っとっけん」


マイカー持参でこのお見合いに駆けつけてくれていた村人達は一斉にソロ~リと視線をそらす。



さっきの盛り上がりはなんやったとね!!


「よかっ!もう、走って行くたい!!」


振袖の袖をたすきがけしているところで、誰かに後ろから首根っこを引っ掴まれる。


「車ば用意しとっけん、こっち来い!」

「与作(よさく)にいちゃん!!」

「ほんなごて、手の掛かるねぇちゃんたいね」

私の腕を引きながら、末のおませな妹の愛(あい)がヤレヤレと肩をそびやかす。


2人に引き摺られるようにして着いた場所は大型バス乗り場。

大型バスの運転席からは富美代ねぇちゃんがVサインを送ってる。


「あたしが連れてくけん、はよ、乗りんしゃい!」

「ねぇちゃん……。ありがとう!」


お礼を言いながら、バスに乗り込みギョッとする。



満席じゃないですか。


しかも、『杉原由紀君、お見合いツアー』の表札が、いつの間にか、『バカヤロ課長さん追っ駆けツアー(終点:デズニーランド行き)』に変わってるし……。


呆気にとられて立っている私のすぐ傍に腰掛けていた男性がペコリと頭を下げる。


げっ。


なぜに、お見合い君も乗ってるねん?!


きまずぅぅいじゃんよ(@_@;)


そんな私の気持ちも知らないふみねぇが、マイクからシャウトする。


「じゃっ、みんな!出発するけん!!シートベルトば、してくんしゃい!」


シ、シートベルト?!


一抹の不安を抱いた私を乗せたバスは、一路、成田空港目指してエンジン全開で発車する。