分かんない……

分かんないよ、課長!

好きって、どう言う『好き』なの?


課長はいつもあんまり話してくれないし、口を開けば『バカヤロー』しか言ってくれないから……


だから、課長の『好き』の意味が分からないよ。



課長……


私……




「でっ!」



隣に座るかぁちゃんに突然、太股を摘ままれる。

「まぁ、すみません。この子ったら、初めてのお見合いで緊張してしまったみたいでぼぉ~っとしてしまって……」



いけない!

お見合中だった。

慌てて、現実に戻る。


「初々しくて可愛らしい方ですね。写真から受けたイメージ通りで……」

私の目の前に座るお見合いの相手の『資産家、三男坊、一流大学出』のおぼっちゃまがほほ笑む。



初々しい?!

可愛らしい?!

私のことっっ??


心なしか頬が緩む。


へへん♪

どうだ、課長!

こんな風に言ってくれる男の人もいるんだぞ!!

目の前に座るお見合い君を改めて見てみると、良さそうな人な感じがするし。


課長と違って、優しそうで、トークもソフトで……

絶対、『バカヤロー』なんて言わなさそうで……


課長みたいに今頃になって、私のこと『美人だったんだな』なんて言うニブニブじゃなくて


それに……


課長より……若くて……


課長より……気が利いて


課長より……



……課長。


私、ばかだ。

今頃、気付くなんて。


私は、それでも、課長のそばにいたい。

「バカヤロー」って叱ってくれてもいいから……




私をこんなところに置いてきぼりにして独りでNYへなんか、行っちゃわないで!!