不覚!

不覚!

不覚!


私ってば、何で泣いちゃったりしたのよ!


とっぷりと日も暮れた会社からの帰り道で、今日の自分を猛反省。


勢い良くアパートの鍵を開けて玄関にドスッと足を一歩踏み入れる。

……けど、なんか踏んだらしい。


「やだ。郵便受けのポスト、壊れて中が出てるじゃんよ!これだから、家賃3万円は……」

ブツクサ文句を言いつつも、足で踏んだ大きな郵便物に目を落とす。

茶封筒に書いてある枠囲みの中には、何やら印刷されている。


「太腹町町役場?」

はてな?

何でこんなところから手紙が?

訝しがりながら、封を切ると中から厚紙が……


「なんですか?これは?」


茶色い二つ折りの厚紙を開けると、美形男子の顔写真がキラリ~ンと姿を現す。



ふぉーーーー!




これはもしや、待ちに待ったお見合い写真ってやつじゃないですか?!




封筒の中からハラリと落ちた手紙を拾ってみると、村長さん直々の推薦状付き。


「すっごぉーい!村長さん、頑張ったんだ!」


さっすがっっ!



お腹出して踊ってるだけじゃなかったんだ、あの村長さん。


『やるときゃ、やる男ばい』ってばあちゃんが太鼓判押しただけのことはある。


その上、封筒にはご丁寧に『Uターン結婚推進委員長推奨』の印字までしてある。


改めて写真の男の人の顔をまじまじと見る。


課長には及ばないけど、この人もなかなかのイケメン様だ。


鬼課長はNY。

寿退社は(きっと)目前。

人生バラ色。




なのに……


胸の奥に重い鉛でも入っているみたいに感じるのは、なぜなんだろう。