今、課長が何か大切なことを言ったような気がする……。

だけど、何でだろう?

頭が全然、回ってないような気がします。

「……どうした、由紀?」

課長のパーにした掌が私の目の前を右に行ったり、左に行ったりしてる。


だけど……

だけど……

「にっ、日本語の意味が……わからないんですが……」

泣きそうになる……。


課長はふーっと決心したような顔で、突然、私の前に跪き、私の手を取る。

えっ?

ええーーーー!!!??


「 You came into my life, and you made all

the sad days disappear.

You're the only one for me.

Will you marry me?」

「課長のバカ……。英語で言われたらもっとわからなくなるじゃないですか」

「由紀、もう一度言う……。結婚してくれ」

ぶわっと涙が押し寄せる。

「い、今の日本語は、分かりました」

「じゃ、返事をしてくれないか?

いい加減、俺の心臓が持たん」

ひざまずいて私を見上げている課長をそっと抱き締める。

「いいんですか?私で……」

「お前がいい」

「私、赤ちゃんとか大好きですよ?」

「好きなだけ産めばいいだろう?」

「でも以前、『産んで欲しいとは言わんだろうな……』って……」

「ああ……。あれか。すまなかった。
このままの俺でいいんだって、ようやく思えるようになった。
お前のお蔭だ。それにお前が産む赤ん坊だったらきっと可愛い……」


課長の目が穏やかに笑う。

そっか。

産んでもいいのかぁ~。

ほんわり心が舞い上がる。


「じゃぁ……100人とか……?」

「……それは、要相談だな」

「ふふっ」

課長の頭を抱き締めて、髪をくしゃっとする。

「でも、もう、課長は答えを知っています、よね?」

「それは、どうかな?」

「課長、もう一度さっきのセリフ、聞いてもいいですか?」

「『要相談』か?」

「その前……」

「由紀、本当にいい加減、心臓が持たないんだが……」

「その前……」

「分かった。もういい……」

いい加減、痺れを切らしたのか、課長は私の手をぐっと引き寄せると、甘いキスをする。

「結婚するぞ!」