「私、課長が、自分のこと、『薄汚れてる』とか『穢れてる』とか言うの聞くと、ものすごく悲しいです」

「由紀……」

「でも、思ったんです。

みんながいっぱい傷ついて、苦しんで、間違って……。

その結果、課長がこの世に生まれたのだとしたら……。

私……課長が薄汚れてても……

穢れててもいいです。

もし、お父様が陥れなければ、2人が再び恋に落ちなかったら、今、ここに課長はいなかったんですよね。

だったら、間違ってていいです。

だって……こうして、課長が今、ここに存在してくれるんだもん。

私を抱き締めて、愛してくれる課長が今、私の目の前にいてくれることが、私、すごくすごく嬉しいです」

「由紀……」

課長の目からすーっと一筋の涙が頬を伝う。

「か、課長?!どっ、どう……し……」

私は鬼の目に涙な課長を見るのが初めてで、オタオタしてしまう。

課長も自分では気づかなかったみたいで、頬を伝った涙を指で拭い、驚いている。

「そ……うか……。

俺は、『価値』を認めてもらいたかったわけじゃなく……、

ただ、誰かに『許して』欲しかったのか……。

ここで生きて……

ただ、『存在』していいんだと……」

「課長……」

課長がそっと私の唇に手で触れる。

課長の甘く切ないキスを受けながら、私の全てで課長を抱き締める。

そして、私達はお互いの存在を確かめ合うかのように、深く強くお互いを求め合う……。