行き掛けて、ふと振り返る。

「課長!もし無事売れたら『それでよし』じゃなくて、何かおごってもらってもいいですか?」

私の大胆な挑戦に周りの社員がどよめく。

呆気にとられながらも、課長は「いいだろう」と口の端をニッと上げる。

「白子どんぶりいっぱい!大盛りを希望します!!」

周りが更にどよめく。

「いや~ん」

女性社員が頬を真っ赤っ赤に染める。

ハテナ??

課長は、椅子から立ち上がると腕を組んで私を見下ろす。

185cm。

でかっ!

威圧感に負けまいと、私も腕を組んで見上げる。

「いいだろう。それで足りなきゃ、俺の分もやるよ」

隣に座っている佐久間さんの喉が、ゴキュッと鳴る。

どこからともなく「課長のを……エロい。エロ過ぎる」の囁き声が……。


課長の顔に不敵な笑みが浮かぶ。

「それから、船盛りも進呈しよう」

「船盛り??」

「魚が船に乗ってるヤツだ」


へぇ~。

東京の魚は船に乗ってドンブラコッコと泳ぐんだ(←これまた、見たこと無い)


こりゃ、是非とも見なきゃ。

見合いの席の東京話に持って来いですよぉ!


「受けて立ちます!その果たし状!」


私は課長に負けじとニタ~リと笑い返すと、トレーディングルームを後に猛スピードで駆け出した。