FSA(金融庁)様に出す超大事な書類になんつー失態を!

「す、すみません!すぐに直します!!」

課長から書類を急いで回収して部屋から出ようとすると、課長が突然、くくっと笑う。

「課長?」

「思い出すな。あの時、俺が寝てたらいきなりETCのアナウンスが聞こえてきてあれは驚いた」

あの時って……。

記憶のファイルを辿る。

「あ~っ!課長を野球で打ちのめしちゃった日のことですね!」

「そこから思い出さなくてもいい」

かぁ~っと顔が火照る。

査定に響くんじゃないかって、マジ、怯えちゃったよ。

「あの時、俺が起きなかったら、バックで逆走するつもりだったろう?」

「まさか~。そんなこと……」

課長の「そうか?」なんて冷ややか~な眼差しに白状する。

「……はい、してたかもです」

課長が「やっぱりな」と笑う。

久し振りに見た課長の笑顔。

すごく嬉しかった。

「白状します。私、あのとき、ナビを全く見てませんでした。

……課長の寝顔に見とれてしまってたんです」

「由紀……」

「わ、笑ってくれてもいいです!

私……あの時から、もしかしたらもう、課長のこと……好きだったのかもしれません」

真っ赤になりながら一気にまくし立てる私を、切なそうな顔をした課長が駆け寄り、息が出来ないほどきつく抱きしめる。