課長が倒れて中止になっていた会議が開かれたのは3日後。

本日のファシリエーター(司会進行役)は佐久間主任。

『日本の事業会社及び地場証券会社が、この度のプロジェクトより軒並み手を引いたのは、悪意ある第三者からの当社の信用を著しく失墜させる業務妨害等が懸念されたのですが……』

佐久間主任が、淀みない英語でスラスラと解説する。


かっちょいーなー。


……何言ってるか、さっぱり分かんないけど。


結局のところ、今回の危機の原因は、今回のプロジェクトにオブザーバーとして参加している権威ある評論家の無責任な一言……

「既存の証券会社の商慣行が、債券市場の流通市場の発展を妨げている」

だったと、佐久間主任から聞いていたから、そのことを報告しているらしい。

そりゃ、無理ないだろうなぁ。

既存の企業や、証券会社の皆さんが怒るのも……。

今までの自分たちのやり方を痛烈に否定されて嬉しいはずがない。

でも、課長は日本に帰って、その火消しに奔走してそれを成し遂げてきたんだから、やっぱ、すごいかも。