「ありがとう。オートミールより、やはりおかゆの方が美味いな」

課長は、美味しそうに味わいながらおかゆを完食する。

「まだ、ちょっと時間はあるか?国際便を出してもらいたい」

課長はベッドから起き上がると、机の上にあったFedEx(フェデックス:国際郵便)の封筒に書類を入れ、脇に補強用の厚紙を入れる。

「……っ!」

「どうしました?!」

課長の指からツーッと一筋の血が流れる。

「切ったらしい」

「バンソーコー、持って来ます!」

確か、この間、エレベーターで膝を怪我したときに医務室からもらったバンソーコーのあまりがバックに入ってたはず。

バンソーコーをバックのサイドポケットに見つけ、急いでベッドルームに戻る。

課長は何もせずに、ただ、じっーーーと自分の指先から血が流れ落ちるのを見つめている。


……様子がおかしい。


「課長、血がベッドについちゃいますよ?!」

私はベッドサイドのローテーブルの上にあるティッシュボックスから急いでティッシュを取り、慌てて課長の指に巻きつける。


「どうしたんですか?ぼーっとして……」

「すまない」

課長の顔色、やっぱりあまりよくない。

「思ったより、深く切っちゃいましたね」

私はティッシュをほどくと、慎重にバンソーコーを巻きつけた。

でも、課長はまだ、じっと指を見てる……ううん、違う。

課長の見つめるのは、もっと、もっと遠いところ……?

その視線の先に何があるの……。


ううん。

私には、関係ないこと……だよね。


「じゃ……、私、帰りますね」

バンソーコーを巻き終わり、部屋から出ようとしたとき、課長に腕を掴まれる。