と、思ったけど、大失敗。

ズダァァァァァーーーン!!!

勢いがつきすぎで、エレベーターの中ですっ転んでしまう。

その振動の衝撃で、エレベーターが警告音を発し、止まってしまう。

「いたた……」

思いっきり、手とか膝を打ってしまい、ストッキングはビリビリに破けて、膝からは血が滲んでいる。

エレベーターに乗っていた人達の笑い声や私を哀れむ声が聞こえる。

恥ずかしい……。

顔があげられなくて、うつむいていると体がフワリと軽くなる。

私を抱きかかえた課長がエレベーターから降りる。

「課長!大丈夫です。下ろしてください。私、自分で歩けますから」

「暴れるな。医務室に連れて行くから黙ってろ。佐久間、隣のエレベーターのボタンを押して、みんなを誘導してくれ」

「……はい」

エレベーターの前で立ちすくむ佐久間主任に指示を出すと、課長は私を抱きかかえたまま非常階段を1段1段上り始める。

私は真っ赤になりながら、おずおずと課長の首に腕を回す。

「ざまぁないな……」

課長の吐き捨てるかのような一言が胸に突き刺さる。

「……すみません」

「何が、『ビジネスとプライベートをわきまえろ』だ」

「えっ?!」

「俺は佐久間のようにお前をあんな風に笑わせることができん。当たってすまなかった」

「課長……」

まさか……。

まさか、課長……。

嫉妬してたんですか?

まさか、課長が……?

それに、いつから会議室の前にいたんですか?

さっきまで凍り付いていた血が一斉に全身を巡り始める。

もう、死んじゃいそうです。

私は課長の首に回していた腕に力をこめて、ぎゅっと抱きつく。