なんてところを見られてしまったんだろう。

すっごく気まずい中、課長が会議室へと入ってくる。

佐久間主任も私の隣で緊張しているみたいだ。

「あの……。かちょ……」

話し掛けようとしたとき、課長のケイタイが鳴る。

「ああ。俺だ。どうした?」

課長はケイタイで話しをしながら、さっきまで座っていた椅子の近くまで歩いて行くと、机の下の棚に忘れたらしい書類を手にする。

「……分かった。これから飛ぶ。チケットの手配を頼む」

課長はケイタイを切ると、そのまま部屋から出て行こうとする。

これから飛ぶ。

チケットの手配。

と言うことは、きっとまた出張だ。

嫌だ!

こんな気持ちのまま、課長と別れるなんて嫌!

「課長!」

「どこでいちゃつこうとお前たちの勝手だが、ビジネスとプライベートはわきまえろ」

「すみません」

私の隣で佐久間主任が深々と頭を下げる。

そんな!

それじゃ、まるで私と佐久間主任が付き合ってでもいるみたいな展開じゃないですか!

否定しようにも冷たい課長の背中が、全ての言い訳を拒絶しているように見える。

課長は振り向いてもくれない。

そして、そのままの足取りでエレベーターホールへと向ってしまう。

「課長、待ってください!課長!!」

振り向いても、待ってもくれない課長の背中を追いながら、私は今にも閉まりそうなエレベーターになんとか滑り込んだ。