「どこがおかしい?」

「だって……」

涙を拭き拭き、それでも笑ってしまう。

課長の気持ちがすごく嬉しい。


でも、数秒後、笑いが引いて、血の気が引く。


降りてる!

降り始めちゃってるよ、このゴンドラ!


私は、課長を突き飛ばすと、窓にへばりついてガックシうなだれる。


終わっちゃった。

天辺キスタイム。

キスすらできなかったじゃないですか……。


ズーンと落ち込んだまま、ゴンドラは地上へと到着。

「本日は、ご利用ありがとうございましたぁ」

にこやかに扉を開ける係員の声に促されて、ゴンドラを降りようとしたとき、課長が私の手をグンと後ろに引っ張る。

「すまないが、もう1周だ」

課長は係員にワンデーナイトパスを見せると、扉を閉める。

「かちょ……」

問う間も与えられずに、課長の唇に塞がれ、抱きすくめられる。

ああ。

課長の唇。

課長の頬。

課長の胸。

全部、全部、大好き。


甘くついばむようなキス。

それから、息もつけなくなるほどの長いキス。



ゆっくりと回る観覧車に揺られながら、私は解けるようなキスに溺れていく……。