「何か言い……おっしゃいましたでしょうか?課長」

「敬語はやめろ」

「でも……」

「ずっと敬語だと疲れる」

「でも……仕事のときに困ります」

「今は仕事じゃない」

「そうですけど。そんなに切り替えられるほど、私、器用じゃありませんから」

じっと上目遣いで睨み返す私に根負けしたのか、課長が両手を挙げて、溜息をつく。

「分かった。で、どこに行く?」

「え?どこって……」

「明日の夕方までフリーだといったんだが」

「課長は会社に戻るんじゃ……」

「今回の日本の滞在は予定をいれていない」

「じゃ、じゃぁ、ずっと一緒にいられるんですね!!」

「さっきからそう言ってる」

まじですか?!

嬉しくて、嬉しくて、嬉しくって、心臓がドンパパンチョって跳ね上がってしまうよ!

「嬉しっ……」

やばい。

なんか、泣きそう。

そんな私の頭を課長は右腕でザツに抱え込むと、ふっと笑った。

「行くぞ。デートだ」