「今、杉原由紀さんに代わるわ」

美女が電話の相手に告げると、「あなたにお話しがあるらしいわ」と私にケータイを渡す。

「え?!私に?」

っつーか、誰なんですか?

この美女は?

それに、電話の相手は誰だってーのよん!

出れるわけないじゃん。

と、思いつつ、美女の屈託のない笑顔に誘われるままにケータイに手を伸ばしてしまう。

新手のオレオレ詐欺か?

いや、美女美女詐欺??

しぶる私の手に美女はそっとケータイを渡し、「こうちゃんから」と囁く。


「こうちゃん??」

だ~れ~じゃ~、こうちゃん???

知らないぞ、こうちゃん。

でも、美女が優しく微笑んで、「出てくださいな」と言うものだから、とうとう出てしまう。

「もしもし。あのぉ……」

『由紀?!』

へっ?!

この低音。

この美声。

まさか……

まさか……

勇気を出して、名前を呼んでみる。

「奥田……課長??」

『お前が何で電話に出てるんだ?』

そりゃ、こっちが聞きたいよ。