気のせいだったのかも。

返事がないこの部屋にいるのがきつくて、私は外に出る。

病院の庭のベンチに腰を下ろし、何を見るともなく空を見上げる。

白い雲がゆったりと流れてて癒されるなぁ~。


その雲は、やがて形を変えてNYへと続く空へと消えていく。

ここに来て、ようやくNYでのことも思い出すゆとりができてきた。

佐久間主任は、課長に今回のことをしっかり伝えてくれてるんだろうか。

電話でメチャ怒ってる風だったしなぁ……。


でも、課長。

助けてください。

私のこと、守ってくれるって言ったよね。

課長の全部で守ってくれるって、ビシィッ~~っとドヤ顔 & 壁ドンで決めてくれたよね。

私、今、課長が必要です。

杉原、今が人生最大の落ち込みっぷりです。

このことに比べたら、400億円の発注ミスなんて軽い軽い!



…………いや、ごめんなさい。

訂正。

やっぱ大した事あったッス。


空を見上げて、ゴニョゴニョ呟いているとき、ひとつの影が私の目の前で立ち止まる。

「あら、あなた。杉原由紀さん?!」

鈴を転がしたような美しい声に顔を上げる。