「あ、そうだ!奥田取締役から、杉原ちゃんに『広間に来るように』って伝言を託ってたんだ」

横田が思い出したようにポン!と手を打つ。

横田の言葉を遮るかのように、佐久間主任が私達の間に割って入る。

「いいよ、それは。それより、杉原君は急用で日本に帰るから、車寄せに1台車回しといて」
「えっ?!日本??」
「詳細は後で僕の方から取締役に伝える。今は急いで車、回して」
「でも……」
「かなり急ぐんだ」
「分かりました!」

佐久間主任の指示に納得のいかないまま、首をかしげながら横田は駐車場に向かう。

「私、自分で運転できますから」
「いいよ、送る」

佐久間主任はむすっとした顔で強引に私の腕を引っ張る。

小走りに中庭を抜けているとき、ふと広間のほうに目をやると、苦味潰したような課長の顔が見えた。

腕を組んで、むすっとしてる。

う〜わ〜……

最上級に機嫌の悪いモードONの時の課長の顔だ。

『あの話は、受けてくれる気になったかね?』

『その件でしたら、以前から何度もお断りしてきました』

もしかしたら、あの時、倉庫で聞いた課長と澤村専務の二人の会話はこのことだったのかもしれないなぁ、なんてぼんやり思う。

広間の上段にいる課長の周りには、例の華やかな女性たちが、目をキラキラさせながら取り巻いていた。

煌びやかだ~。

みんなバリキラッキラ☆してる。

この世のもんとも思えんなぁ~。

課長ってば、本当にすごい世界の人だったんだなぁ・・・・・・・

佐久間主任に手を引かれながら、そんなことをぼんやり思いながら、私はパーティ会場を後にした。