「さっ、佐久間主任っっ!!」

驚いた私はとっさに、彼を突き飛ばしていた。

「ってぇ……」

「すみません!」

慌てて、シリモチをついちゃったらしい佐久間主任に手を差し出した時、おお~っ!と言うどよめきと、盛大な拍手が聞こえ、ぎょっとする。

私と佐久間主任は周りをキョロキョロと見回す。

私たちに、じゃない?!

大きな拍手喝采が沸き起こるのとほぼ同時に、広間にいたはずの横田が厨房に飛び込んでくる。

「ニュース!ニュース!!BIGニュース!!」

厨房の全員の視線が横田に注がれる。

「たった今、奥田取締役のバンカメへの移籍と取締役就任が発表されたよぉぉ~!!」


バンカメに?

課長が?

以前から、バンカメに移籍するかも、なんて話はあったけど、まさか、本当に?


しかも、取締役待遇なんて……。


「これで、ますます、手の届かない存在になるな」

いつの間にか立ち上がっていた佐久間主任が、くっと苦笑いしながら私を見下ろしていた。