「たっだいま～」

独り暮らしのアパートの玄関に着くと、さっさとパンプスを脱ぎ捨て、続いて、リビングでストッキングも脱ぎ捨てる。

そして、スーツのまま、ベッドにダイブ！

はぁ～、今日も疲れた。
課長に何回、「バカヤロー」って言われたことやら。

髪をまとめたピンを力いっぱい引っ張って、近くのテーブルに放り投げる。

課長の言葉って、マジ破壊力あり過ぎっしょ。

あの時の言葉が蘇り、さらに深く落ち込む。


「人生最大の試練、か」


だよね。

いっぱいメーワクかけて来たし。
つか、今日もかけたし。


あの日、一瞬でも、課長から恋の告白でもされちゃうかもかも、なーーんて思ってたノー天気な自分の脳みそが笑える。



課長と私じゃ、違い過ぎる。

年だって、１０歳くらいは違うし。

中身だって、英語と日本語くらいの違いがあるよ。

それに、課長は甲子園で、私は補欠の補欠の補欠。



はぁ……

ルックス良し（モデル並みの185ｃｍの長身）

顔良し（これまた、モデル並みにイケメン）

性格良し？（ただし、私に対しては例外）

ついでに、仕事も出来て、あの女子悩殺ボイス。


ふっ！

私のような一般庶民から見れば、別世界の人じゃね。



ズルズルとベッドから這い出すと、台所の隅っこからカップ麺を取り出し、ズズッとすする。

この間のお弁当を作るのに、あり金をありったけハタイタから当面は貧しいカップ麺ライフだ。



「課長と食べた日本料理、おいしかったなぁ……」


あ～あ。
もう二度と食べることもないんだろうなぁ。

年収だって違い過ぎるもん。

片や3,000万（推定）。

片や300万（実測）。


……なんか、ミジメだ。


お風呂でも沸かそうと思って立ち上がろうとした時、突然、携帯電話が鳴る。