今にも心臓が飛び出そうなくらい、ドキドキしている。

言った!

ついに言っちゃったよ!!

どぉしよぉぉぉぉ!!!


MPもHPもレベル1のザコキャラ杉原が、いきなり大ボスとガチンコ勝負だよ。

でも、出ちゃった言葉は引っ込められない。

課長の顔が心なしか強張っているような気がする。


逃げたい!

……でも、逃げたくない。


私のせいで課長はNYなんかに追いやられてしまったんだもの。

それすらも知らなかったなんて……

ショックでカノジョ止めてしまったけど……

何も教えてくれない課長を心の中で責めてしまったけど……


違う!

私、本当は悲しかったんだ。


「た、頼って欲しいんです。課長に……。それにもっと、その……あ、甘えて欲しいです」

言葉が緊張に震えるけど、何とか振り絞って言葉を口から押し出す。

課長には、いつも本当の課長で私に接して欲しい。

杉原人生史上、精いっぱいの言葉を課長にぶつけた。


なのに、課長はクルリと私に背を向け、上着に手を通すと

「今日はもう遅い。帰るぞ。送るから早く支度をしろ」

とだけ言って、部屋から出てしまった。



は……

……はは。

そ……っか。


……だよね~。


今頃になって何言っちゃってんの?

私ってば。


もう、カノジョでもなんでもないのに、差し出がましーーーーっちゅーか、未練がましいっちゅーか。


でも、泣くもんか!

言うだけのことは言ったんだ。

なんとか気持ちを持ち直そうと奮闘するのに、ぱたぱたと涙が両手で握り締めたスーツケースの上へ落ちて行く。





ああ、だめだ。


杉原、撃沈しました。