そして、会社に戻って数分後。

「バカヤローーーー!!なんだこのメールは!小学校のガキに出すんじゃないんだぞ!」

杉原、なぜか怒られてたりする。

でも私だって、怒られっぱなしの新人とはもう違うんだぞ!

反論に出る!!

「さっき打ち合わせた通りにデータを起こしましたけど」

「ここは日本じゃない。この期限で書類を出すことは、彼らがすべき義務なんだ。それが報酬に見合う仕事の一部だということをお前自身が頭に叩き込んでおけ!提出を『お願い』するのではなく、これが提出してしかるべき『当然』のことなんだという感覚で仕事をしないとここでは完全になめられるぞ!」

課長の言葉に血の気が引く。

そう、ここはアメリカなんだ。

日本の文化が通用しない。

課長はそんな厳しい環境の中で、結果を出して来たんだ。

なめられもせず、むしろ尊敬すらされて。

改めて自分の考えの浅さに唇を噛む。

「……すみませんでした」

「分かればいい。すぐに全てやり直せ」

ぎょ、ぎょええええーーーー!!

「今すぐですか?」

「今すぐ。今日中に、だ」

か、カッチョーーー!!

私、まだアメリカについて4時間ほどしか経っていないんですが。

私は課長と違って、人間なので疲れもすれば、休みもしたい訳なんですがっ!!!

「どうしても今日中ですか?」

「そうだ。良かったな。真夜中の12時まで後7時間もある」

くっ!

鬼だ!

やっぱり、奥田課長は鬼が島の最高級霜降り肉クラスの鬼だ!!

大量の書類(と辞書)を抱え、臨時に用意されたデスクにトボトボと戻ろうとした時、扉を叩くノックの音に顔を上げる。

「入れ」

「失礼します」

「ああ、佐久間君か。どうした」

「いえ……、その」

佐久間主任がチラッと私を見る。

「業務時間が終了しましたので、そろそろ、杉原君をマンションに案内しようかと」

やったーーーー!!!

ナイーーースタイミングだよ、佐久間主任!!

心の中でバンザイする。

「いや、いい。彼女はこれから急ぎの仕事がある。マンションは俺が案内する」

「「えっ!?」」

課長が放った一言に思わず、ゴキュッと息を飲む。