「別れたということは、やっぱり付き合っていたんじゃないか」

佐久間主任は迎えの車に乗り込むなり、足を痛そうにさするとやっぱりなって顔して後部座席で腕を組む。

「しかし、なんでまたこのタイミングで告白する気になったわけ?」

「ずっと勘ぐられたままじゃ嫌だったし……。それに今回、私はもうそーゆーの抜きで、バリバリのキャリアウーマンモードでここで頑張りたいと思って来たわけですから……」

私が答えるなり、ぷっと佐久間主任が吹き出す。

「杉原君が?キャリアウーマン??」

「何がおかしいですか!?」

「いや………」

否定しつつも笑いをかみ殺して、佐久間主任は肩で笑っている。

「ま、君がそう言うんならがんばってみれば?」

軽~くスルーですか?!

ぶんぶくれつつも、車窓から見える高層ビルの数々に目を見張る。

「すごーーーい!!」

「観光はまたいずれ。NYに来て早々悪いんだけど、仕事は山積みなんだ。取りあえず、今日は支社の方に連れてくるように奥田さんに言われているんだ」

……課長に?!

やばい!

名前を聞いただけで、胸がドキドキ、ムカムカする。

心の整理も出来ないまま、タクシーはNY支社前に横付けされる。

近代的でハイソな高層ビルの中に、すごく優秀そうなビジネスマン達が次々と吸い込まれていく。

「ここの31階がオフィスだよ」

荷物を下ろし終えた佐久間主任が摩天楼を指差す。


ここが、新たな私の戦場なのね。

なんか凄すぎるぞ。


ピカピカに磨き上げられた床を進み、そして、耳が痛くなるようなエレベーターを降りると、そこは大理石で散りばめられたオフィス。

「なんですか?ここは!!す、凄すぎるんですが!」

「ああ。金融機関は信用が第一だからね。これもステータスへの投資なんだよ」


ほぇ~!

別世界じゃぁぁぁぁぁ。


14,800円の私のスーツで勤まるのか?私??


「支社長室はこっちだよ」

佐久間主任に促されて慌てて後を追う。


いよいよ、戦闘開始だ!!!!