気付けば榊室長はいない。

ふっ、ふっ、2人っきりなのか??


ま~じ~で~かぁ~!!!

この状況は


こ~~わ~~い~~。

専務のコホンと言う咳払いに、慌てて気持ちをしゃきんと持ち直す。


「君が杉原由紀くん……か」

「はっ、はいっっっ!!」

澤村専務が目の前のローテーブルの上に置かれていた黒ファイルをパラパラと開く。


ゲゲンチョ!


もしやそこには私のことでも書いてあるのか??!!


「ふむ。前回のTOEIC800点とあるね。まずまずの成績だ」

ビンゴ!

やっぱ、私のことがしぃぃぃっかり書いてあるっぽい。


でも、良かった。

とりあえず褒められたらしい。

「ありがとうございます」

一応、頭を下げる。

社員全員、社命による半ば強制となっているTOEIC英語検定試験。

がんばってやっといて良かった。

でも、考えてみりゃ、そりゃ成績も良かろーぜってもんよ。

課長は海外だったから、デートをすることもないし、ヒマ三昧だったもんね。

ふっ。

それに何を思ったか、健気に「課長にふさわしい女性になりた~い!」な~んて、この半年間、脳ミソフル回転で必死こいて英語の勉強もしてたっけ。


って、800点も取っちゃってたなんて。

どんだけヒマだったのよ、私ってば。


「当社の社内規定を十分にクリアしている」

「はっ?!」

しゃないきてい?

なんの??


専務はファイルをテーブルの上に戻すと、おもむろに腕を組んで私に目線を戻す。


「一か月ほど前から、奥田君からサポート社員を一人NYに送って欲しいとの申請を受けていた。
君が適任だろうと奥田君からの指名だ。
そこで、だ。
ぜひ、君にNYに行って、奥田君のサポートをしてもらいたい」



・・・・・・・・・・・・・はい?!