「ああ。榊(さかき)、ご苦労だった」

中央奥のおっきな机に座った専務らしき人物が、顔を上げないまま書類に目を通している。

えっ?

澤村??

うちの会社名「澤村証券」の澤村?!

それに、それだけじゃない。


さわむら……さわむら……

なんか、どっかで聞いたことがある。

どこでだっけ?

さ・わ・む・ら……

さ……わ……

ハテナマークが私の頭の上を、チヨチヨと周遊旅行している時、澤村専務が顔を上げる。



その瞬間、体中に電流が流れたように総毛立つ。



似てる!

奥田課長に……

そっくりというわけではないけど。

なんとなく、体格とか……



ううん。

違う。

目だ!!


あの人の心を奥の奥まで見透かしているかのような……

それでいて、人に警戒心を与えない――――――

澄んだあの穏やかな……「目」。


そうだ!!

そう言えば、課長の名前は、以前、「澤村巧(さわむらこう)」だと営業の林さんが言っていた。

この人も、澤村。

偶然の一致?

それとも……


気付けば、澤村専務は私の目の前のソファに腰を下ろし、じっと私を見ていた。