…頭の中は《?》だらけ。


好きと言われて、キスされて…



いつ、どうやって車に乗ったのかもわからない。


気が付けば、さっきの洋楽が流れてて、

気が付けば、奏のマンションの近くで。



「あっ!もうここでいいです!!」


あたしはマンションから少し離れた場所で、車をとめてもらった。



「あ、ありがとうございました。」


「あぁ、別にいいよ」

山下君はルームミラーを見て何かを確認しながら言う。



あたしは車を降りた。


すると山下君も車から降りて来て、あたしの肩を掴んだ。



「さっきの冗談じゃないから…」


あたしは俯く。

「…ごめんなさい。あたしは…」


「待つから、大丈夫」



山下君はあたしのあたまをポンポンとしてから車に乗り込んだ。



あたしはそのまま目の前のコンビニに駆け込んだ。




…一息入れてから帰ろ…


あたしは奏に電話をする。


「あっ!もしもし!今コンビニなんだけど…何か欲しいもの…「知ってる…今コンビニの前だから」


あたしは、携帯を耳にあてたまま店内から外を見る。



…奏…



奏の険しい表情を見て、全てを理解した。




奏は無言で店内に入って来て、あたしの腕を掴み、そのまま引っ張り出すように家に連れて行く。



「奏!違うの!!ただ送ってもらっただけなの!!」



奏は何も言ってくれない…




腕を掴まれたまま、部屋に入る。



あたしは、そのままバスルームに連れて行かれ、頭からシャワーを浴びせられる。



「やめてよっ!奏!!」




「アイツのにおいがするからだろ!!」


「…奏…」



「俺から離れるな…」



奏はあたしをきつく抱きしめた。

あたしも奏を負けないくらい抱きしめた。



二人とも服を着たまま、全身びしょ濡れ…



「俺、かっこわりぃ…
さっきアイツが俺に挑発するから…」


奏はあたしの肩に頭を乗せて呟いた。


「…奏。大丈夫だよ!あたしは奏しか見てないから…」


「わかってる…」


「だったら…」


「…なんでかわかんね…千秋の事になると不安になって、堪えられなくなる…」


「あたしは…奏が好きだから。」



あたしは奏の頭を撫でた。



「ガキ扱いすんな…」


「プッ!ガキじゃん♪」


「うっせ!」


「このままお風呂入っちゃお♪奏も一緒に入ろ!」



−−−−−−−


あたしたちはお風呂を出て、直ぐさま寝室に向かった。



「…俺、こんなに女に依存した事ないわ…」


「嬉しいよ…」


「千秋…」


またあたしをきつく抱きしめてくれる。



「奏が好き…」



「俺も。千秋が好き…」



あたしたちはお互いを求めあった。




−−−−−−−


「千秋…バイトだけどさ…」


「あぁ…辞めた方がいいね…」


「じゃなくて。夏休みまではちゃんとやれよ?」


「え?だって…」


「仕事は仕事だから。こんな事で辞めたら千秋の為にならないからな」


「…うん。わかった。」


「アイツは気にいらねぇけど。」



…大丈夫だよ。
あたし奏しか見てないんだから…



−−−−−−−





バイト最終日。

山下君とはあれから普通に接している。

山下君もいつも通りだった。


ランチタイムが終わり、スタッフルームで最後のランチ。


山下君は相変わらず携帯をいじりながら食べている。



「山下君…短い間だったけどお世話になりました。」


「あぁ。」


「あの…あたし…」


「俺はお前が好きなのは変わらない。それだけ。
たまには店に顔だせよ?」


「はい!」




あたしは、マスターや桂子さんにも挨拶をして店を出た。



「千秋!!」

奏の姿を見つけて、あたしは奏の元に駆け寄った。


「バイトお疲れ様!よく頑張ったな!」


「うん!さぁ明日から夏休み終わるまで遊ぶぞ!!」


「おぅ!エッチしまくりだな♪」


「…バカ。
さぁて、今日はお給料もらったし、外食しよっか♪今日はあたしが奢る♪」


「いいねぇ♪焼肉がいいかも♪」


「まっかせなさい♪」




−−−−−−−



こうして、あたしの初バイト、初同棲…が夏休みと共に終わって行った。

奏との付き合いは、誰もが羨むくらい順調で、

気が付けば、あたしの髪も奏と出会った時くらいまで伸びていた。




「もう2年生も半分過ぎたなぁ…」



「千秋…俺、ヤバイ…」



奏は参考書やら赤本やらを机に広げたまま、突っ伏している。




奏は受験生な訳で…。


今頃になって、勉強を必死にやっている。



「模試の結果きたんだけど…志望してるトコ…全部D判定だった…」



「…ま、まだ受験まで3ヶ月あるし!!」



「もう3ヶ月だ…」



…確かに。

まわりでは、枠で大学が決まった子もいたりするみたいで。



「よ、弱気になるなっ!
やるしかないでしょ!?」


「……」




「ち〜あ〜き♪」


いきなりあたしに抱きついてくる人。



「り、リョウ先輩!」


「んだよ!なんでリョウがくるんだ?!ってか千秋から離れろ。腐る。」


「なんでって、俺、自分の教室にいちゃいけないのかよ。」



あ。そうだ。

授業後、あたしが奏達のクラスに来たんだった。



「千秋♪今からクレープ食べ行こ♪」


「クレープ??」


あたしは目を輝かせる。



「…裏切りモノ…」


奏が机に突っ伏したままボソッ言う。



「あ…リョウ先輩…今日は辞めておきます…」


「ッチェ。つまんね〜」
そう言って帰って行った。


リョウ先輩は、専門学校に決まってるから、もう自由なんだよね。



「はぁぁぁ…千秋…」



「何?」



「俺…」



「ん?」



「エッチしたい…」



「はぁ?!」



「だってさ、受験生だからって、月1は厳しいべ?千秋に触れないと勉強に集中出来ない…」



「……」



「って事で、今日俺ん家泊まれっ♪」


あたしは満面の笑顔で言った。

「奏♪とことんやろっか♪」


「マジ?!千秋♪」




「とことんやるよ?
お勉強…をね…」



あたしはニヤっと笑った。


−−−−−−−

奏はなんとか、近所の志望校に合格した。



…俺はダメだ…とか、
…浪人決定だ…とか言ってたくせに、合格した途端、

「さすが俺♪」
「受かって当然♪」…とか言ってるし。




…奏がこの学校を卒業しちゃうんだ…


…大学生になっちゃうんだ…


急に淋しくなってきちゃう…


卒業式の練習を重ねていくうちに《奏が卒業》って、リアルに感じてきていた。




2年前…


あたしは、雷太と別々の高校に進学した…

その時と同じ不安な気持ちになっていった。




離れたら…


また別れちゃう…?



大学生って…


高校生よりずっとずっと大人だもんね。


あたしなんか…


奏の中から消えちゃうかもしれない…





「ユリ…ごめん。あたし、卒業式の練習サボる…」


「あっ!千秋!!」





そのままあたしは、バッグを持って、学校を出た。



正門を出て振り返る。


ここで奏と出会ったんだ…


この学校には桜の木がないんだって奏が教えてくれた…




あたしは携帯をポケットから出して、ピクチャーフォルダーを開く。



…入学式と書かれた看板を携帯で撮ろうとしたら、奏が前を横切って…


フフッ



奏の横顔が写った写真を見ながらあたしは…




…泣いた。




奏がいるのが当たり前だった学校…

4月からは居ないんだ…



「コラ。練習サボって何してんだよ」



振り返ると、奏がいた。



「奏こそ、練習出なくていいの?!」


「あんな練習してるくらいなら、千秋と高校生活楽しんでる方がいい♪」


「奏っ!!」



あたしは、奏の胸で泣いた。


奏はあたしを優しく抱きしめてくれた。


「あたし…不安なの!奏と離れたら…あたしの事忘れちゃうんじゃないか…って…」


「バァァカ!誰がお前忘れるかよ。っつうか、離れねぇし。」


「…うん」


「ずっと一緒だ…」



卒業式。



あたしは始めから最後まで泣いていた。



ユリはずっと隣であたしの背中をさすってくれていた。




在校生が、卒業生を送り出す道を作り、拍手で送り出す。



あたしの前をどんどん卒業生が通っていく。



あたしは顔が上げれず、卒業生が通り過ぎる足元だけを見ていた。



あたしの前で誰かが止まる。

顔を上げると、リョウ先輩だった。



リョウ先輩は目にうっすら涙を浮かべて、あたしを見る。


「…千秋…またクレープ食べに行こうな…」


「リョウ…先…輩…」


「千秋−!!!好きだぁぁぁ!!」


リョウ先輩はあたしをガッシリ抱きしめて叫んだ。

「えぇぇぇぇぇ?!」


「千秋!!もう我慢できない!奏なんかやめて俺にしろっ!!」


リョウ先輩はあたしの手を取って、走り去ろうとした。



「コラァァァ!!!!!
リョウ!!!お前、何してんだよ!!
千秋を離せっ!!!」


「うっせ〜!!千秋は俺がもらう!!」


「千秋!!!お前もいつまでリョウに掴まれてんだよ?!こっちに来い!!!」


奏はあたしの左手をとる。

「行くよ!!千秋!!」

リョウ先輩はあたしの右手を掴んだまま。




在校生も卒業生も悲しみの涙が止まって、あたしたちを呆れて見ている。


恥ずかしい…


「あぁぁ!!もういい!!このまま行くぞ!!」

奏は諦めて言った。

リョウ先輩もニヤっと笑って言う。

「だな♪」



あたしたちは、そのまま手を繋いだまま体育館を出ようとした。



体育館を出る直前に奏がクルッと振り返って体育館中に響くくらいの声で叫んだ。。



「山瀬千秋に絶対手出すなよ?!こいつは俺の彼女だ!!
太一!!千秋の監視役に任命するっ!!」



「りょ〜か〜い!!」


太一は大声で返事をして、場内は大爆笑に包まれた。






卒業式が無事終わり、

奏があたしの家に来た。



あたしの両親が、奏の卒業パーティーをしたい…という事で。




「…にしても。お前、なんで色んなヤツと写真撮ってんだよ。」


「あたしだって訳わかんないまま…だったよ」


あたしは、卒業生の男の子達に一緒に写真を撮って欲しい…と頼まれて、
30分程撮影会をさせられていた。


「…留年したらよかったな。俺、心配になってきた…」




「な〜に言ってんの!奏君♪これからずっと一緒に居られるんだから!」



お母さんが会話に入って来た。



「そうだよ、奏君。これからは二人一緒なんだから!」

お父さんも加わる。



「まぁ…そうっすけど…」


奏はあたしをチラっと見た。



「?????」




「さぁ♪みんなで奏君の卒業と二人の門出をお祝いしましょ♪」




「?????」




「あの…卒業を祝うのはわかる…二人の門出って?」




お父さんとお母さん、奏までが顔をあわせて、ニヤっと笑う。





「4月から千秋は奏君と住んでもらう♪」




は?





「はぁぁぁぁぁぁぁ?!?!」






あたしは奏を見る。


奏はクククっと笑いながら言った。



「ずっと黙っててわりぃ!そういう事だから♪」


あたしは口が開いたまま。


「もう♪千秋ったら♪口閉じなさい!」




あたし、奏と一緒に暮らすの?!



「嬉しいっっっ!!!」



あたしは、奏に抱きついた。





3月末にあたしの荷物が奏の家に運ばれた。

モノトーンで統一されていた部屋に、所々ピンクが目立つようになった。



「やっと片付いたね♪」


「俺の部屋が…ピンクに染まっていく…」



−−−−−−−


夕飯を食べて、お風呂に入り、あたしたちはまったりタイム。


ソファーに並んで座って、テレビをみていると、


「あ。千秋、コーヒーいれて!」


「うん、わかった!」



あたしがキッチンに向かうと、奏は自分のバッグを何やらゴソゴソして、またソファーに座った。



あたしは、コーヒーをいれたマグカップを持って、奏の隣に座る。



「…なぁ、千秋。」


「ん?」


「これからもずっと一緒にいような!」


「うん!もちろんだよ♪」


「ずっとだぞ?」


「うん。ずっとね。」


「千秋、手出せ」


「ん?」
あたしはグーを出した。


「…ドラえもんかっ!!
普通、手をひろげて出すだろ…」


奏はそう言ってあたしの手をひろげ、小さな箱を渡した。


「…コレ…は?」


「開けろ」


あたしは、その箱を開けた。



「リ…ング?」



あたしの手が震えた。


目の前が涙でにじんだ。


「…奏…」


「こんなの安モンだし、虫除けみたいで、お前を縛るみたいで…なんだけど…」



奏はそのリングをあたしの左薬指にはめて、


「実は俺も♪」


と、左薬指にはめられたリングを見せてくれた。



うっ…うっ…


あたしは涙が止まらない。


奏はあたしを優しく抱きしめて言った。



「俺は千秋しか見てないから。
千秋しかいらないから。
…だから、千秋は俺の傍にずっといろ。」



「……」



「返事は?」



「…承…知。」



「お前は侍かっ!!」



「奏…愛して…るよ…」



「よく出来ました♪」



奏はあたしに優しいキスをした…


「愛してる…千秋」





[完]
あとがきへ



こちらのサイトでは初の作品です。



私が経験した高校時代の恋愛を元に話を膨らませました。


《あんな事あったなぁ〜、こんな事あったなぁ〜》
なんて思い出しながら、
家事の合間にチョコチョコ加筆してたので、
途中で《??》な箇所があるかも…です。


ありのまま書くと18禁過ぎるので、だいぶフワフワ系になったかな!


また近々、その後の千秋×奏を書けたらなぁと思います☆




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