彼女の飴のストックが切れた。 僕が彼女と付き合いはじめてから初めてのことだった。 戸棚にはもう飴は一粒も入っていなかった。 彼女は言った。 「飴が食べたい」 ポケットに手を入れると 透明な袋に入ったりんごの飴があった。 「りんごの飴だけどいい?」 そっと頷く彼女は消えてなくなってしまいそうだった。 「ずっとポケットに入れてたからちょっと溶けてるかも」 彼女はそっと笑った。 まるで それが精一杯かのように。