「平野さんですよね?」

「はい」



「好きなんで、付き合ってもらえますか?」





彼女は僕が言いだせなかった言葉をさらりと言ってのけた。



彼女がそう言っても
押し付けがましくなく嫌な感じもしなかった。


シンプルで
潔くて
ストレートなその言葉は
暖かい春の光の中で
一切の翳りを帯びずに浮かんでいた。




やっぱり、そういう言葉には
似合う人と似合わない人がいるんだと思った。




そのころから思っていたんだ。

彼女は凄い人だって。