気を取り直して元気よく歩き始めた時、あたしは自分の目を疑った。
こんなにたくさんの人がいるんだ。
きっと、他人の空似……だよね…?
……いや、いつも見てきたあたしの目が見間違える訳がない。
目に写るのは長身で爽やかないかにもモテそうな男と、その横を歩く小動物のように守りたくなるような女の子。
そう。女の子と歩く武宏がいた。
女の子とはしっかり手を繋いでいて、2人の世界に入ってるのか周りのことなんか気にしてない様子だ。
………もしかして、
もしかして、まさか………彼女!?
いや、何も知らない通行人でもこの2人を見たらカップルだと思うだろう。
あんなに優しい顔して、あんなにしっかり手を繋いでたら、もう彼女しかいないよ、ね……
苦しいし辛いけど、意外にも冷静に物事がはっきりと見えた。
今までウキウキワクワクしてた気持ちが馬鹿みたいに思える。
彼女がいることを知らないで、1人で突っ走って舞い上がって。
頑張って化粧したり武宏の為にチョコ買ったり、全てが馬鹿馬鹿しく気分が一気に下へと落ちた。
最悪………もうやだ……っ!