「……っ、」


何も言葉が出ない。


なにこれ。なんで……?


水溜まりのように滴る血とぴくりともしない身体。


「鵺ーっ!!」


あたしは駆け寄り顔を見た。


それは死人みたいに冷たく青白かった。


次第に野次馬も増え、遠くからはサイレンが聞こえてくる。


「あ……あ…、」


えぐれた傷口を塞いでも血はとめどなく溢れてくる。


赤く染まった腕時計が見えて、あたしは何度も何度もボタンを押した。


早く……過去に戻ってよ……っ!お願いだから、鵺を助けてよ……っ!


鵺が死ぬなんて想像もつかない。


どこか不思議な空気を纏っていて、何をしても完璧だったから。


なのに……なのに今の鵺は、死人みたいな顔してる。


あたしに残されたのは絶望だけだった。