あたしは誰にその言葉を伝えたいの?
それは武宏じゃないことに、今気付いた。
自分でも信じられない。
あたしの胸にいるのは、あの黒髪に丸い眼鏡、謎だらけの鵺だった。
それでも「好き」って鵺になら言ってもいいと思う。
いや、鵺じゃなきゃ駄目なの。
「……鈴?」
無言になったあたしを武宏が不思議に思った。
今あたしはずっともやもやしてきたモノの正体が分かってすっきりした。
「武宏、好きだったよ」
『好きだった』
武宏に言うのはこれが1番適してる気がした。
「彼女さんを大切にね!じゃ!」
今のあたしは泣きたい顔でも無理して笑ってる顔でもない。
鵺のことが好き。
それが分かっただけで幸せ。
そして早く鵺の姿が見たくなった。