その人はストレートの長い黒髪で、まるで日本人形のように肌の白さを強調する。

女性にしては身長は高く、雰囲気も見た目も落ち着いていた。


「鵺、いるかしら?」

細い喉から出た声は高過ぎず、気品が漂う。

美しいという言葉の代名詞のような人。

そしてこの人は鵺とどういう関係なんだろう、とそこばかり気掛かりになった。


「え、と、鵺は今用事があって出かけてます」

そう、とだけ呟きその大きい瞳であたしを凝視する。

「な、なんでしょう?」

あたしは無言に耐えられなくてそう言い、そっぽを向いた。


「ところで貴方は誰かしら。鵺の好みとは思えないけど」

顔は美人なのに、意外とズケズケとモノをいう人のようだ。

別に鵺とはそんなんじゃないし!


「ただ店番を頼まれただけです!貴方こそ誰なんですか?」

その女性はあらやだ、と笑い少しあたしに近付く。

「ごめんなさいね。名乗るのを忘れていたわ。私は湊(みなと)」

にっこりと聖母のように微笑み光が舞った気がした。


「あ、あたしは崎野です。で、鵺とは一体……」

その時またドアの軋む音が聞こえた。