もう外は暗くなり、鳥肌が立つほど寒さが増す。
知らず知らずの内に、あたしは摩訶不思議装飾屋の前に足を運んでいた。
家には『過去のあたし』がいて帰れないし、今のあたしには居場所がない。
唯一事情の知ってる鵺だけが心の拠り所な気がして、無性に会いたくなった。
自然と軋むドアを押して埃っぽい店内に入る。
「……いらっしゃいませ」
「鵺!」
カウンターの所にいた鵺を見つけると、思わず顔が綻んでしまった。
「……何故、私の名前を御存じなのですか?」
「え、鵺……?」
そうだった。今の鵺はあたしと出会う前の鵺。あたしのことなんて微塵も知らないんだった。
「え……と、あ、これ見て!」
あたしはつけていた腕時計を見せた。
それを見た鵺はああ、と納得したようだった。