そこには有頂天だったあたしのご機嫌を突き落とす光景があった。
ベンチに座るラブラブなカップル。
それはやはり武宏たちで。
外だということも忘れてるのか、2人はキスをしていた。
少ししたら武宏は彼女から顔を離し、照れたように笑う。
あたしはそんな表情知らない。そんなに嬉しそうにする武宏なんか知らない。
ただ一連のその動作を遠くから見てることしかできなかった。
それでも今この地面に足をつけて立っていることに気付いて、あたしはゆっくりと身を翻す。
分かっていた。2人は恋人なんだからキスをすることを。好きあってることを。
それでもあたしが受け止めるには大きすぎて、ただ呆然とするばかりだった。