こんな暗くて埃っぽい店内なのに、少しだけ明るくなった気がした。

「あ、ねえ、鵺のほうが年上だよね?敬語使わないでよ」

「ですがお客様は神様に等しい程の立場でしてこの店にとってお客様は……」

鵺はいつまでもうだうだと理由を述べる。


「あーもう何でもいいから敬語やめてよ!むず痒くなる!」

一喝したら鵺は話すのを止めて少し笑った。


「はは、じゃあお言葉に甘えることにしようか」

話し方を変えただけで、鵺の印象ががらっと変わった。

少しだけ武宏と似てる気がする。……気のせいかもしれないけど。


もう2度とこの店には来たくないと思ってたのに、今はここから離れたくない。

居心地のいい空間にあたしの気持ちは緩んだ。


でもあたしは、先に進め為……、いや、過去に戻る為に行動しなくちゃならない。

「……じゃ鵺、さよなら」

「ああ、さよなら」



パタンと閉まったドアのあと、知らないはずなのに鵺は鈴……、と小さく呟いた。