「過去の自分と遭遇した場合、命はないでしょう」
「……え?」
いきなりの死の宣言に身体が強張る。
……なに?死ぬの……?
例えば今日、『過去のあたし』の跡をつけていて1度でも振り返られたら、あたしは死んでいた。
今日のことを思い直すと自分の軽率さにぞっとした。
「……ドッペルゲンガーというのをご存じですか?」
男は何も話さないあたしに聞く。
「、知ってるよ。もう1人の自分を見たら死ぬってやつ」
「そうです。貴方様は今、影です。つまりはドッペルゲンガーなのですよ」
「影……」
過去に戻れる変わりに、自分の姿を見たら死ぬ。
あまりにもハイリスクだ。だけどハイリターンでもある。
「……過去に戻ったら、あの男は貴方様のものかもしれない」
……そうだ。過去をやり直したら、武宏はあたしの彼氏になるかもしれない。
甘い誘惑にあたしの思考は揺れた。