「……それで、これはどうやって使うの?」
この腕時計に興味が湧かなかったと言えば嘘になるかもしれない。
けど、何故過去に戻ってきてしまったのか知りたかった。
男の話を要約すると、この腕時計についているボタンで戻りたい曜日と時間を選ぶらしい。
あ……あの時、曜日が変わってたのに気付かなかったから、過去に戻ってきたのか……
あたしは静かに頷いて納得する。
そして話によると、過去に戻れるのは1週間前までで必ず守らなければならない決まりがあるということだった。
「それは、」
「……それは?」
男は急に真剣な顔つきになり、空気が震えるのを肌で感じた。
「決して過去の自分に姿を見られてはいけません」
「……それだけ?」
「簡単なことじゃありませんよ」
男は念を押す。でもあたしは今日、『過去のあたし』に姿を見られていないし余裕に思えた。