あたしはあの店のドアの前で気抜けしたように突っ立っていた。

あまり深く考えないようにはしてるけど、頭は武宏のことを考えたいみたい。


「っ!」

その時勢いよくドアが開いて後頭部に直撃した。


「痛った……」

ったく誰なのこんな荒々しいことするのは!

……ってあたしだ!

『過去のあたし』はあたしに気付く余裕もなく、家に向けて走り去った。


なんとか頭から武宏を追い出し、怪しい店の中に突入する。

「ちょっとどういうこと!?」


あの店員の男は驚く様子もなく『あたし』が渡したであろうお金をしまっていた。

「……ああ」

と一言呟いて理解したようだった。

やっぱりこの人の顔色は悪そうで、店内は埃っぽい。


「こんなよく分かんない腕時計なんていらない!返金してよ!」

「お客様が私の説明をお聞きにならなかったからでしょう?」