その腕時計はほんのりと暖かくて、あたしはそんなに握り締めていたのかと思った。

ところで、今は何時なんだろう……

ゆっくりと腕時計を表に向ける。


8時……20分!?

ち、遅刻確定ーー!

あわわ、と急いで支度しようとしても鞄も制服もコートもない。


え、なんで……?


それに今あたしは黒の部屋着を着てる。

何故か全く同じモノが床に脱ぎ捨ててあった。

しかもさっきまで床に寝そべっていたのに、布団はめくれてくしゃくしゃになっている。

……まるで、さっきまで誰かがここにいたみたいに。

慌てて学校に向かったあたしのように。


あたしはしばらく訳が分からないまま、部屋の真ん中で突っ立っていた。


そして、ふと目に止まった文字。



あの腕時計に記されていた、木曜の字。