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月が雲の隙間から見え隠れしている。


夜はまだ寒くて一瞬だけ身体が震える。


鵺は遠出するには少なすぎる荷物を地面に置いた。


あたしは店のドアを背にして無心で眺めた。


なんて言ったらいいか分からなくて、少し無言になる。


どちらも何も言わないまま時間だけが過ぎた。


「………ぷっ」


鵺の方を見ると、鵺もまた困った顔をしていて笑ってしまった。


また会えるか分からないのに、2人して困った顔をしてるなんて変だ。


あたしが小さく笑ったら鵺も笑ってくれた。


「来年かもしれないし十年後かもしれないけど、必ず戻ってきてね」


「ああ」


さっきまでの気まずい沈黙なんて嘘なくらいすらすらと言葉が出てきた。