きっと鵺は気付いてる。


あたしが鵺のことを好きだってこと。


鵺の好きな人があたしにバレてるってこと。


……あたしたちが両想いだってこと。


それでも鵺はあたしの涙を拭おうとはしなかった。


あたしはその鵺の震えてためらう拳を知らない。


「……っ、」


ついには嗚咽も込み上げてきて涙顔を隠す意味もなくなった。


でも涙は見せないよ。お願い。いつまでも気付かないフリしてて。


俯いて袖で顔をごしごし擦るあたしを鵺はずっと見てた。


手に持ってた雑巾は固く握り締められて、顔はどことなく切なそうだった。


「……もし両親を説得できてまた冬になったら……ここに戻ってくる」


絞り出した声は、誰が聞いても分かるくらい苦しそうなものだった。