鵺の声が少しだけ苦しそうになったのをあたしは気付かなかった。


「……トラツグミは一ヶ所にとどまることはできない渡鳥だ」


……思い出した。


あたしがまだ小さかった頃、ライがいなくなった理由を親から聞いた。


そんなのおかしいよってあたしは八つ当たりしたっけ。


「俺とトラツグミは仲間だ。だからどちらにしろもう此所にはいれない。……この店は湊に預けたから、遊びに来たらいい」


……そうじゃないの。


鵺がいたからこの店が好きになったの。


鵺がいたから此所に来ようって思えたの。


なのに……鵺がいなくちゃ意味がない。


我慢してても出てくる涙の量が増えた。