沈黙だったあたしたちを暖かい風が包んだ。


日が落ちるのが遅くなって気温も上がって、少しずつ春が近付いてくる。


「今まで店番、ありがとう」


「好きでやってたんだから気にしないで」


そう。あたしがただ鵺の店を守りたかったから。


何か鵺の為に出来ることをしたかったから。


無意識の内に、鵺に傷を負わせてしまった罪を償いたかったのかもしれない。


鵺はあたしの頭をぽんぽん、と叩いた。


「……本当、ありがとう」


一言そう呟き、店に戻っていった。


なんだったんだろうと思いながらあたしは別のことを考えていた。


鵺が昔からあたしに興味を持ってくれて、今も友達以上の感情を抱いてくれてることを知ってる。


……そしてあたしも、鵺があたしのことを好きな以上に鵺が好きだって思える。