あたしは家に帰ることも忘れ、ただこの場に立ち尽くすことしかできなかった。
人にぶつかられても罵声を浴びせられても、あたしは動けなかった。
なにこれ……勘違いも程々にしようよ。あたし、間抜けすぎだし……彼女いたなんて、一言も聞いてなかったし………っ!
視界は濁り思考も鈍ってきた時、武宏たちがこちらに向かって歩いてきた。
不幸中の幸いなのか、まだあたしには気付いてないみたい。
……あたしはこのたくさんの中から武宏を見つけることができるのにと、また少しだけ傷ついた。
けど今はそれどころじゃない。
こんな情けない自分、見られたくない!逃げなきゃ!
回らない頭を必死にフル回転させて、見つからないように近くの目立たない店に入った。