「現場にも遺体にも
争ったり抵抗したような
形跡が見られへん。
物取りにしては、
不自然やないか?」


「確かに…
でも須藤さん、
現場は暗く身を隠せ
そうな場所もあります。
犯人はそこに身を潜め、
隙をついて被害者を
襲った…
とは考えられませんか?」


「それやともっと
不自然やないか?
ただの物取りなら、
力の強い男より
非力な女を狙うのが
自然や。
それにあの雪の中で、
いつ誰が来るかも
わからんのにじっと
待つんか?」


立花は右手で
自分の右の耳朶を
触った。
思考する時の
立花の癖だ。
「確かに不自然です…
犯人は何故被害者を
選んだんでしょうか?」


「被害者を選んだ
んやないんちゃうか?」
立花は視線を資料から
須藤に向けた。


「最初から
被害者…茅原智也を
狙っての犯行…
俺はそう睨んどるんやがな」
須藤は腕を組み、
立花は視線を
机の上の資料に戻した。


「では須藤さん、
犯人は何故
被害者を狙ったん
でしょうか?」


「それはまだ
なんにもわからへん。
先ずはもっと情報を
集めんとな」
立花は頷いた。